
No.564 COVID-19を経て生じた気持ちの変化とは? ― 消費者・労働者・生産者の心理状態 ① ―
今週の一句
"立ち止まり 自分の立ち位置 見渡せば 明日果たすべき 役割探し"
2020年のCOVID-19によるパンデミックの時は、世界経済が凍り付く恐怖を感じたことを思い出します。この危機に際しては、我々の消費者としての動きが落ち込んでいき、必要最低限の消費行動へと停滞する状態になりました。また労働者としても集団感染症に対する警戒から、行動範囲を制限して接触を避ける状態にならざるを得ない人が増えました。さらに生産者としては、サプライチェーンの断絶による工場の稼働停止や、観光業、外食産業の売り上げ激減から、資金繰りが困難となるといった状態でした。このような厳しい環境の中で何が変わったのでしょうか。
まず、消費の減少とともに将来の雇用、収入の不安から、貯蓄志向と将来のための投資が広まったのがこのタイミングです。それはオンラインサービスやテクノロジーの発展など新たな時代の始まりを感じたからかもしれません。さらに消費については、一時的な停滞から、先送りせずに現時点の楽しみに向かう志向が出てきたことも特徴かと思います。労働者の立場に関しては、テレワークの拡大など、本格的な働き方改革が進行しています。これについては、各企業と働き手との関係を再構築する必要があると解釈すべきでしょう。日本においてジョブ型人事の議論が生まれたことも、そもそもスキルや専門力の向上なしに、人材価値の向上もなく、それなしに企業の成長がないことに直面したということなのです。そして生産者としては、供給方法の多様化を進め、特にEC(Electronic Commerce :電子商取引)やキャッシュレス対応への移行が大きく進みました。このような経済活動の主体者たちの行動は一時的なGDPの落ち込みと、それを支える政府の財政支出の拡大を生みました。現在までの結果としては、パンデミックからの回復と新たな分野の成長を見出したという良い面と、それに対する反動が見られます。改めて、VUCAの時代*における経済の主体者たちの心理状態を見極めることの大切さを感じるべきなのだと考えるのです。
*VUCAの時代(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、 Ambiguity:曖昧性 将来の予測困難な現代社会のこと)
参考:マーケットの見方No.528 VUCAの時代 ─ 現在のリスクとは? ①
日本の消費者態度指数と米国の消費者信頼感指数の推移
(2015年5月~2025年5月)
出所:内閣府、全米産業審議会のデータを基にあおぞら投信が作成。