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No.609 親方とは? ― エキスパートへの道 ③―
今週の一句
誰しもが 目をつむりたい 大ピンチ それをも凌ぐ 親方の業
どの道においても、一流の職人になるというのは、とてつもなく高いハードルを越えることにほかなりません。自分の身の周りを見回した時に、職人と呼べる人が何人いるでしょうか。見習いから始めて、実務を一人で成し遂げることができる力を持つことは容易ではありません。小さなことでもやり切ることは大変なことなのです。「仕事」というものは、この小さなことの積み重ねでもあります。すなわち、「仕事」を成し遂げるためには、この小さなことができる職人たちが集まる必要があります。その意味では、まず見習いから実務を遂行することができる職人(Journeyman)になることが「仕事」をする中で、自己の価値評価を得ることができる権利となるでしょう。そして、職人の中には実務遂行に留まらず、もう一段広い視野を持つ親方(Expert)もいるのです。職人とは、ひとつの仕事に関して卓越した技術を持ち、誰にも真似できないまで道を極めている人のことを言います。人にはそれぞれの持ち味があり、その意味では、どのような道でも優れた職人というのはファンを得ることができる権利を持っているとも言えます。お菓子作りでも、洋服デザイナーでも、手品師でも、ファンを得ることができるまでには、他人にはわからない本当に必死の努力が必要なのです。その大変さを知っているからこそ、人は職人に敬意を表して熱狂するのです。
そして、その職人の中でも一段と広い視野を持つ「親方」とはどのような人なのでしょう。親方とは、卓越した職人を育てる力を持つ人のことを言います。「育てる」というのは、単に物事を教えるといったレベルではありません。それぞれの個性を活かしながら、世の人々を大いに喜ばせたり、熱狂的なファンを得たりできるような職人を育てることができるか。このためには、親方は他の人にはできないことが、できるようになることが必要です。それは、即興演奏が出来るか?ということなのです。まず、予定通りの物事を卓越した技術で完璧に演奏出来ることは、職人として認められる要素です。親方とは、準備していたことと違う状況が生まれたり、突然のアクシデントなど想定外の状況になっても、自分の経験と底力でその状況を乗り切る人のことを言います。そのようなレジリエント(Resilient)な精神をもって、人に道を示すことができることが、将来を担う人を生み出すのです。「さすが親方!」と呼ばれるためには、五感に加えて第六感も磨かれているのだと思うのです。