
No.565 失業率という数字と雇用の質への対応とは? ― 消費者と労働者と生産者の心理状態 ② ―
今週の一句
"働き手 昨日の続きを 繰り返し 明日には違う 求めに応じて"
現在、日米ともに失業率の数字は歴史上で低いレベルにあります。日本の完全失業率は2025年3月で2.5%(前月比+0.1%)と、依然として完全雇用に近い状態ですが、問題は人手不足によって生じた完全雇用であり、有効求人倍率の低下にみられるように景気の先行きが明るいわけではない点に注意が必要です。一方、米国の失業率は、2025年4月で4.2%(前月比変わらず)と、こちらもほぼ完全雇用に近い数字ですが、雇用者数の増加が鈍化してきており、リセッション(景気後退)のリスクがないわけではないと言えます。
米国は、イーロン・マスク氏が率いるDOGE(Department of Government Efficiency:米政府効率化省)の影響により、連邦政府の雇用者数は9,000人減少と、これで3か月連続の減少と2022年以降で最長の連続減少となり、トランプ政権が発足した1月以降では合計で2万6,000人の減少となっています。また製造業の雇用者数は、自動車組み立て工場やコンピューター・電子製品工場での雇用減少により1,000人減少する一方、ヘルスケア部門が引き続き雇用の増加をけん引しており、病院と外来サービス全体で5万1,000人増加、それ以外では、倉庫保管、宅配便・メッセンジャー、航空輸送などで増加が目立っています。トランプ関税の影響が明確に出ていない状況で、4月は恒久的解雇が前月比+10.5万人増加し、失業期間の中央値は10.4週間に上昇、昨年11月のサイクル最高値に接近しており、今後の雇用の動きは引き続き注目となります。
日本の雇用の特徴は、失業率の低さと非正規雇用の増加です。特に若年層、女性、高齢者では依然として非正規雇用が多くみられており、雇用の質という意味では課題があります。また労働市場で求められる人材が変化していることに対して、ミスマッチの状況があります。これはリカレント(再教育)の浸透がまだまだ足りていないことが大きな課題です。過去とは異なる“仕事”の変化に対しては、常に新たな発見を持ち、自らの取組を考えていかなければなりません。雇用は数字だけだはなく、その質がより重要になっていると考えます。
日米の失業率の推移*
*日本は2015年5月~2025年4月、米国は2015年5月~2025年5月の推移
出所:総務省、米国労働省のデータを基にあおぞら投信が作成。