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No.637 ひとつのストーリーから次のストーリーへ ― これからの起承転結 ③―
今週の一句
思いをば 伝えるための 想像力 そを繰り返し 語り部つづく
今の時代、人から人へ何かを伝える方法は、主にスマートフォンやパソコンなどによって、一瞬で伝わる手段が優先されています。内容はできるだけ簡潔に、曖昧さがないようにすることが最重要とされ、スピード重視で、チャットでのやり取りも即答が原則という状況です。このような伝達手段は、インターネットが普及した1990年代半ばから2000年代前半と、オンラインで人と会うことが日常化した2020年春からのコロナ禍を経て一気に広がりました。今や、それ以前の状況が思い出せないほどになりました。
それ以前、何かを伝える方法は、基本的には「面と向かっての対話」か「電話での対話」が主でした。この“対話”という行為は、一方からの発信に対して他方からの応答があり、さらにそれに打ち返すという「双方向の発信・応答の繰り返し」に特徴があります。このやり取りの中で、お互いの言い分を確認しながら“対話”は結論へと歩みを進めていきます。今ではまどろっこしいと感じられるかもしれないこの行為が、相手を知ることにも繋がり、“対話”によって生まれる空気感が、言葉以上に大切なものを伝えているのです。
これよりも、さらに時間の掛かる行為が「手紙をやり取りする」ということです。書き手から読み手へと伝える心と、それを読み手の想像に委ねること、そして読み手が自らの心で感じ、想像すること、さらに行動へと移していくことなど、この流れを支えるのが、書き手の「起承転結」によって組み立てられた伝える力であり、人と人とを結びつけるものなのだと思います。自分でも、手紙を書くときは、普段はあまり使っていない脳の部分を使っていると感じます。短い手紙の中に「起承転結」をいかに綴るかを考えねばなりません。それには相当な想像力が必要とされます。通常なら省略してしまっている想像する時間をあえて掛けることにより、書き手である自らの思いに対して読み手の想像力がどのように働くかを『想像しながら書くこと』が必要になるのです。
では、これからの「起承転結」はどのように続いていくのでしょうか。例えば“起”はゼロからの出発であり前例のないことなのだ、と意識されるようになるかもしれません。それを受けて深める“承”はさらに未知の世界を掘り下げていく段階となるでしょう。そして“転”では、その未知の世界に対するAlternative(選択肢)が登場することもあり得ます。まとめの“結”とはあくまでひとつのピリオドであって、そこには次へと続く余韻が残るのです。これからの世界では、物事への対応については課題形成力がもっとも人の力を必要とするものとなっており、ひとりひとりが何度も何度も「起承転結」を繰り返す力が大切になります。必ずや人の力が未来へと繋がることを信じつつ、ひとつのストーリーは次のストーリーへと続いていくのだと考えます。
本号をもちまして、「マーケットの見方」を休載させていただくことになりました。長きにわたり「マーケットの見方」をご愛読いただきました皆さまに、心より御礼申し上げます。