
No.578 成長へのマネーフローを作ること ― 資産運用立国へ ③―
今週の一句
"投資とは 投げることなく 包むもの 愛をもって 成長を見る"
“投資”とは資金や時間を投じるという意味ですが、英語で“投資する”を示す“invest”という言葉の語源はラテン語の“investire” から来ており、これは『誰かに衣を着せて地位や権威を与える』という儀式を示していたものです。この語源から改めて考えることは、日本においてこれまで使われてきた“投資”という言葉が、『何か値段が上がりそうなものに短期的にお金を投じることによって利益の獲得を目指す』という意味で使われているように思われて、語源とあまりにも異なるのではないかということです。すなわち、日本において、資産運用は“投資”であり、その本源的な意味すら浸透してきていなかったということだと思います。
しかしそれが今、大きく変化しつつあるのです。今の日本で、一番に“投資”の大切さに気づいて行動に移したのは若者たちでしょう。自分たちが仕事を始めて、お金を手にするとともに、将来への備えを同時に始めることに踏み出したのです。“積立投資”という投資の原則のひとつを活かして、もうひとつの原則である“長期投資”を開始した人が大きく増えてきたのです。この動きは、今後の日本における『資産運用の大きなベース』となるでしょう。ただ、この動きに対して課題も露呈しました。米国において401kによる確定拠出年金制度が広まった1980年代は、米国が国を挙げて自国企業の競争力強化を目指し、そのために資本市場の整備を進め、その資本市場に個人の投資資金を取り込むという、国の成長のためのマネーフローを作りました。日本は、この点が米国と異なると思います。すなわち、もうひとつの投資の原則である、“分散投資”のそもそもの中心に日本が置かれていないといった課題です。もちろん日本国内だけにこだわることを求めるものではありませんが、アドバイスを行う金融業界に、今後の新たなマネーフローを作るという覚悟が足りていないことが課題なのです。
戦後80年の今年、次の時代へと移行する動きが増えていると感じます。企業改革、市場改革など、新たな流れが、今年2025年が乙巳(きのとみ)の年らしく起こっています。“投資”とは『愛を持って成長する人・ことに託す』という行為だと考えるのです。
NISA口座数の推移*と2027年の政府目標
*2023年12月末以前の旧NISA口座数は、一般NISAとつみたてNISAの合計値。
出所:金融庁「NISA口座の利用状況調査(令和7年3月末時点)」のデータを基にあおぞら投信が作成。