
No.531 インドへの期待と壁 ― アジアの成長の姿 ① ―
今週の一句
"ブッダなら 社会を変えて いくために インドの未来 誰が見通す"
今年に入ってからもインドの高成長は継続しています。IMF(国際通貨基金)によると、2024年1~3月期の実質GDP成長率は、前年同期比7.8%と2023年10~12月期(同8.6%)よりもやや減速したものの、これにより2023年度(2023年4月~2024年3月)の成長率は8.2%となり、2022年度実績(7.0%)を上回りました。また、インドの人口は毎年1,000万人ペースで増加しており、すでに2023年には中国を抜いて世界最多のおよそ14億2,800万人に達しています。現在のインドの高成長は今後も続くのでしょうか。
IMFの予想では、2024年以降もインドは6%以上の成長率を維持すると見込まれています。また、インドの名目GDPは2025年に4兆3,398億ドル(約608兆円)と予想され、日本を抜いて世界4位に浮上する可能性も示唆されています。そして、現在のインドの平均年齢は28.2歳(2023年時点)と日本の平均年齢の48.4歳と比較すると20歳の違いがあります。
このように表面的には経済成長への期待が大きいように見えますが、インドの経済の環境は整備途上である面もあります。州レベルの統治機能(規制当局、地方自治体、司法機関)が経済発展のサポートを十分に行えないことも散見されます。不動産契約においても権利関係の確認が困難な場合があることなどは、開発のスピードにも影響を与えています。また、労働力に関しては女性の労働参加率が低下傾向にあり、このことを変えるためには、文化的かつ組織的な改革が必要だと思われます。また、貧富の差も非常に大きく、社会全体の発展のためには、分断されている地域、宗教、男女などを、分断から融合へと進めるべく、国内だけではなく、海外投資家の力も使っていくことも考えるべきなのでしょう。インドをはじめとするアジア各国の成長の中で、日本が何を果たせるのかを考え実行することが、アジアの時代を作っていくのだと考えるのです。
アジア各国の実質GDP成長率(1980年~2029年)
※2024年以降は予測値
※インドのデータは財政年度ベースを表示
出所: IMF(国際通貨基金)World Economic Outlook(世界経済見通し)2024年7月(2023年~2025年データ)及び同年4月(1980年~2022年、2026年~2029年データ)を基にあおぞら投信が作成。