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No.635 他人(ひと)に伝える力 ― これからの起承転結 ①―
今週の一句
営業の 始めの一句に 込められる 他人の気持ちの 景色に映るや
様々な文章や物語を書くときに、「起承転結」という組み立てを用いることを耳にされたことがあるかと思います。もともとは漢詩の構成に由来するもので、一句が5字からなる「五言絶句(5字×4句=20字)」や、一句が7字からなる「七言絶句(7字×4句=28字)」が代表的な形式となります。漢詩には、第二句と第四句の末尾で韻を踏む(=押韻、音を揃える)ことや、平仄を揃える(音の配列を整える)ことなどの規則があります。「起承転結」は、そうした形式上の決まりではなく、内容の組み立てであり、人に文章で伝えるときの基本的な考え方だと言えます。
「起句」は情景や主題を提示し、「承句」はその情景や主題を受けて深めていきます。「転句」では視点や場面を変えることで展開を生み、「結句」で全体をまとめ、余韻を残します。すなわち、このような展開を進めることで、書き手と読み手が、同じ情景を思い浮かべることから始まり、その中での思考や行動を共有します。さらに次の展開へと転ずる場面に同時に移行することにより同調することが可能となり、全体の結びに至るまでの理解が積み上がっていくのです。このように「起承転結」は、読み手を物語へと自然に引き込む方法であり、何かを強く訴えるための方法ではないとも言えます。従って、ビジネス上の企画書や提案書といった類には、必ずしもそのまま適しているとは言えないでしょう。
では、ビジネスの世界で「起承転結」を用いる場面がないのでしょうか。決してそんなことはありません。ビジネスでこそ、他人(ひと)に伝えるべきことが数多くあります。その際に「起承転結」の考え方を用いることが重要だと考えます。営業担当者とお客さまが相対したときに、通常は営業する側と営業される側という立ち位置にあります。では、その立ち位置のまま営業を始めて、果たしてお客さまに本当に伝わるでしょうか。今や営業とは単なる商品販売ではなく、コンサルティング営業が必要であると言われています。このコンサルティング(consulting)こそ「起承転結」の土台となるのです。英語の”consult”の語源はラテン語の”consulere”で、人の知恵を借りてよく考えるという意味だそうです。すなわち、営業の「起句」において提示される“情景と主題”がお客さまにとっての“情景と主題”として共有されるかどうかにかかっているのです。営業にとって最も重要なことは、お客さまと共有できる「語り手のストーリー」に拠るのだと考えるのです。