
No.525 世界の強豪国入りした日本フェンシング ―日本のチームプレー ③ー
今週の一句
"旗手からの 重圧押されて 苦しむも 味方に支えられ ロングアタック"
日本フェンシング界にとって今回の2024年パリ五輪での各選手の活躍は、国際レベルへの挑戦を続けた結果だと思います。まず個人種目で初の金メダルを獲得した加納虹輝選手ですが、10歳の時に観た2008年北京五輪での太田雄貴選手の銀メダル獲得に感動してフェンシングを始めました。その加納選手がエペ(フェンシングの3種目の1つ。有効面:足の裏を含む全身)で金メダルを獲得した意味は大きく、これまで小柄な日本人選手に向いているということからフルーレ(有効面:胴体のみ)に強化が集中していましたが、他種目でも徐々に向上を図り、2021年東京五輪でエペ団体初の金メダルに輝くなど、複数種目での強化が功を奏したのです。
この間の強化では、フランスなどフェンシング強豪国からコーチを招聘し、他国との戦術の流行に関する情報交換や、各国の一流選手との合同練習が可能となる環境を作ってきました。この人脈で選手に自信をもたらしたことが今大会の勝負強さに現れています。だからこそ団体では、男子フルーレが金、男子エペが銀、女子フルーレと女子サーブル(有効面:上半身)が銅と、フェンシングの伝統国であるフランス、イタリアに引けを取らない結果となりました。その中でもコーチからのアドバイスとして大きいのは『勝者のメンタリティ』だと言われています。『日本人選手の技術的な実力は既に世界レベルとなった』と言われてからも勝ちきれなかった時に『自信を持って戦うこと』を植え付けたのです。だからこそフェンシング発祥の地で金メダルを獲得した加納選手は「認めてもらわないと困りますね。」とコメントしました。
開会式で日本の旗手を務めた江村美咲選手は、女子サーブルの個人戦では重圧を背負い敗退しましたが、団体戦では他の選手の活躍もあり3位決定戦まで進出し、その決定戦でも仲間のポイントでリードした形で江村選手にバトンが渡されました。そして最後の試合でピスト(試合コート)に上がる時に「チームメイトがここまでつないでくれた。最後は下がって取られるくらいなら前に出よう」と攻めの姿勢を貫き、新しい歴史を作ったのでした。どの競技でも世界を知るためのネットワークを持ち、挑戦へと向かう選手が育つこと、これが強いチームを作るのだと考えるのです。
日本フェンシング 五輪メダリスト(2008年~2024年)
出所:各種資料を基にあおぞら投信が作成。