
No.491 ドイツの債務ブレーキから未来への道 ―各国の国債発行 ②―
今週の一句
"ドイツでの エネルギー確保も 必死なり 国の課題と 社会の挑戦"
ドイツが新規の純借り入れに対する憲法上の制限である「債務ブレーキ」について、先月11月、4年連続で停止すると決定しました。ドイツ憲法裁判所が、新型コロナウイルス対策向けの未使用分600億ユーロ(約9兆6,200億円)をグリーン事業や産業支援に振り向けることを認めない判決を下したため、ショルツ首相率いる3党連立政権は財政危機に陥る可能性を目前にして予算の見直しを強いられています。
ドイツは第一次世界大戦後に激しいインフレを経験したため、憲法にあたる基本法で政府の債務をGDPの0.35%未満に抑えるという「債務ブレーキ」と呼ばれる財政規律を守るルールがあります。ただし現在のドイツでは、昨年のウクライナ侵攻の影響などによるエネルギー価格の高騰から家計を守るため、電気料金とガス料金の補助が必要でした。それが今回の判決で補助は取りやめる方針となったのです。政府は財政支出を増やすことで国民を守っていることを示せるものの、今後に財政赤字の影響を残すことの懸念とも戦っています。さらに米国や日本と同様に、ドイツでも低成長に悩んでいます。2045年までにカーボンニュートラルを達成するという目標もあり、今後地球温暖化・気候変動の歯止めに向けて、水素エネルギーの実用化や再生エネルギー拡大、電気自動車の充電インフラ整備など、多額の投資が迫られているのです。ドイツ国民は現在の状況を見て、増税や社会保障サービスの減少を懸念しています。この懸念を乗り越えていくためには、ドイツ経済の屋台骨を支える製造業界は大きな構造転換を必要とされています。そのためにも経済、行政、社会のデジタル化が必須となっているのです。そして、このドイツの抱えている課題は日本にも共通なのです。スピード感をもって課題を消化していくこと、その挑戦はまた今から加速するのだと思います。ここでも評論家ではなく、具体的な行動力が必要なのだと考えるのです。
ドイツ10年国債利回りの推移(2002年1月~2023年5月)
ドイツ国債発行額の推移(2002年1月~2023年12月)
出所:ドイツ連邦銀行及びドイツ連邦財務省HPのデータを基にあおぞら投信が作成。