マーケットの見方

No.532 ベトナムの成長スピード ― アジアの成長の姿 ② ―

今週の一句

"バイク乗り 前後に子供 すり抜けて 街の進歩は 地下に潜りて"

1億人の人口となったベトナム社会主義共和国は、今年5月にトー・ラム国家主席が就任、1986年から採用された「ドイモイ(刷新)政策」をさらに進めて、現在のフロンティア国の評価から、新興国入りを目指しています。「ドイモイ政策」とは、市場経済化と対外開放、官から民への転換を進めるという、社会主義体制を維持しながら、新たな資本主義思想を取り入れて、国全体の発展を目指すという政策です。この政策によりGDPの成長率は上昇、1992年から1997年には年間8~9.5%の成長を維持するなど、飛躍的な成長を遂げたのです。その後、2007年にWTO(世界貿易機関)への正式加盟を果たすなど、国際経済の仲間入りを果たすとともに、現在は『チャイナ・プラスワン』の代表国としての立ち位置を占めるようになりました。現在のベトナムはどのような状況と言えるのか、現地へ出張して見てきました。

まず、私がベトナムの「今」を見て感じたのは、人々の動きに成長スピードがあることと、同時にインフラなど社会整備という課題です。南部の中心地であるホーチミンの市街地では、朝早くからバイクと自動車の渋滞が始まります。特にバイクの数には本当に驚きます。2人乗りは当たり前ですが、時に3人、子供も含めて4人乗りのバイクを発見することも多々あります。すなわち、人が移動する手段としての公共交通機関が整備されていないということなのです。首都ハノイでは2021年に地下鉄が開業していますが、ホーチミンでは着工当初は2018年に開業予定としていたものの、完成したルートも未だに営業を開始しておらず、ようやく今年(2024年)中には開業するのではないかと言われている状態です。このように、行政府主導のプロジェクトの停滞といった状況は、残念ながら国への信頼としては大きな課題を残しています。ただし、同時に海外からの直接投資は一気に加速しており、国家単位の動きよりもグローバルサプライチェーンのスピードの方が遥かに速いことも示しております。この点では、日本企業よりも米国、中国、韓国の各企業の動きの方が、さらに速いという一面も多く見られています。

今後、現地の大学において日本語教育の開始といった動きもあり、日本とベトナムとの人的交流などの機会も増えるかと思います。日本の課題は、その時の対応のスピードであり、各企業における国際的な多様性への適応力なのではないかと考えるのです。

ベトナムの人口と実質GDP成長率(1980年~2029年)


※2024年以降は予測値
出所: IMF(国際通貨基金)World Economic Outlook(世界経済見通し)2024年4月(1980年~2029年データ)を基にあおぞら投信が作成。
 

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