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No.556 長期債利回り上昇の意味とは?  ― 円金利はどこへ ② ―

今週の一句

"利回りの 曲線を見て 何思う その位置を決める 人の気持ちか"

2025年3月10日に日本国債の長期債(10年債)利回りが1.575%と、2008年10月以来約16年5ヶ月ぶりの水準まで上昇しました。毎月勤労統計調査の1月分速報でパートタイムを除く一般労働者の基本給が過去最高の前年同月比3.1%増と発表され、また、今年の春闘の賃上げ要求レベルが6%を超える高水準となっていることから、4月30日・5月1日の金融政策決定会合で利上げ可能性ありとの見方が広がったことが影響したとみられます。マイナス金利から金利のある世界へと戻りましたが、これからの日銀の利上げパスの予測が不透明であることも、投資家の動きを慎重なものにしています。

また欧州ではECB(欧州中央銀行)が利下げをする中、長期金利は財政悪化を理由に利回りが急上昇しています。そして米国では、トランプ大統領が同盟国に対して防衛費の大幅増額を求めており、大統領が国防総省の政策担当国防次官に指名したコルビー氏は、早期に日本の防衛費をGDP比で3%以上に引き上げるべきという考えを述べています。これまで歴史的背景から、日本の防衛費はGDP比1%以内に抑えられてきましたが、今後は世界情勢や米国からの圧力など、様々な要素が絡んでくることが考えられます。

このように長期金利は日銀の金融政策の影響だけでなく、予想インフレ率の変化や財政の状況など様々な要素を織り込んで動いていきます。さらに長期債の投資家のポートフォリオの運営状況を反映した長期債の需給動向によっても、金利の変動幅が変化していくことがあります。多くの投資家が年度毎の投資計画を策定しており、それは長期債利回りに関する想定レンジを基に作られています。そのため、想定レンジという仮定のものが、何がしかの理由でズレを生じた時には投資行動も変わっていくことがあるのです。今年に入り政策金利の引上げは預金金利の引上げを呼んでおり、金融機関にとってはALM(Asset Liability Management:資産と負債の総合管理)が重要な課題となっています。そうした中、長期債の需給と利回りの動向は、刻々と変化することを忘れてはならないと考えるのです。

 

日本・米国・ドイツの10年国債利回りの推移
(2007年1月31日~2025年3月10日)

出所:Bloombergのデータを基にあおぞら投信が作成。

 

 

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