
No.540 国家の競争力へのアプローチ ― 米国大統領選挙 ③ ―
今週の一句
"効率を 求めて無駄を 削ぎ落とし 育つ芽までを 摘まぬ心か"
トランプ次期米国大統領は、MAGA(Make America Great Again=米国を再び偉大に)の流れをさらに押し進めるべく、「政府効率化省(DOGE:Department of Government Efficiency)」を新設することになると発表しました。「政府の官僚主義を廃し、過度な規制を削減し、無駄な支出を減らし、連邦政府機関を再構築する」という使命を帯びた、この新たな省を率いるべく、イーロン・マスク氏をトップに据えて、中国との競争に勝つという国家の競争力強化戦略が、再選を果たしたトランプ次期米国大統領の大きな期待となっています。イーロン・マスク氏は、Twitter(現X)買収後に、80%の従業員(6000人以上とも言われる)を解雇するという大胆な効率化の実績があり、これはCEOを務めるテスラでも実行されてきたという結果もあります。この新たな省の権限や運営方法などの位置づけも注目されています。
国家の競争力強化について、このような既得権益の打破による効率経営の徹底という考え方は、私が20世紀最強の政治家だと考える1人、ヘンリー・キッシンジャー氏も支持した考え方です。民間企業も、そして政府をはじめとする公共機関も、年月を経ると非効率が積み上がる傾向があります。それでは競争力を発揮出来なくなるリスクがある、だから一気にそれを打破する必要があるという考え方です。“効率性”というのは組織運営において欠かせない発想であり、これを実践し続けることが難しいものがあります。“非効率”の中にも、組織の成長を促す種はあるかと思いますが、現代の競争社会では、そのような時間的猶予が許されない傾向が強まっているとも言えるでしょう。
また企業は成長過程においては、人件費増加を伴うことが常です。これを適切なコスト、あるいは成長への投資と考えるか、単なるコストと考えるかはその組織に拠るものです。企業、そして国家そのものの競争力強化は、成熟した各国の大きな課題であることは間違いありません。だからこそ、そこには組織運営の哲学が必要となります。誰のために存在するのか。その問いかけに応え続ける必要があると考えるのです。
トランプ次期大統領の国家戦略
出所:各種資料を基にあおぞら投信が作成。