
No.516 過去最低の労働分配率とは? ―人材育成の重要性 ②―
今週の一句
"働けど 働けどとは 思うもの この先の道 何処を歩むか"
財務省が公表した法人企業統計調査によると、2023年度の労働分配率(日本企業の生み出した付加価値が働く人にどれだけ配分されたかを示す指標)は、大企業(資本金10億円以上)では38.1%と前年比2.1%低下し、統計で遡ることができる1960年度以降で初めて4割を下回る過去最低となりました。人件費自体は前年比2.6%増となりましたが、それ以上に経常利益が13.7%増の64兆9,000億円と過去最高を更新したため、労働分配率の低下に繋がったものです。中小企業の労働分配率は70.1%と前年比1.2%低下と1991年以来の低水準でした。一方、2024年春の賃上げ率は5%となっており、特に若手人材確保のための賃金上昇が20代中心に見られています。これからの人事と賃金はどのように進むのでしょうか。
企業経営と労働分配率との関係にはいくつもの変数が介在します。上場企業の業績については円安効果もあり好業績が目立ちます。手元資金は100兆円を超えるとも言われています。ただし今後の景気については、インフレ高止まりの可能性など不安材料もあります。企業業績に関しては、新規分野への進出の必要性や、さらなる生産性の向上を目指すための施策など、コストをかけるための準備を意識している部分があります。またPBR(株価純資産倍率)1倍超を目指すといった資本政策を求める声も大きくなっています。そのような中で、過去のように従業員の基本給を上げることで退職金と社会保険料という将来負担を増やすことに慎重になる構図があります。だからこそ経営判断が重要となります。企業業績を生む原動力となる人材への投資をどのように考えるかということであり、その評価方法が極めて重要だということです。もちろん業績を生む原動力は、収益を生むための様々な役割分担の結果です。その中でのプロセス評価を行うことで、企業価値の向上に繋がっているということが明確になるのです。今後の労働分配は、企業が決めるばかりではなく、人材側の選択によって決まる部分も増えてくるでしょう。これこそが働き方改革に繋がるのだと考えます。
出所:財務省HPを基にあおぞら投信が作成。