
No.466 なぜ新たなものが生まれるのか ―産業革命 ①―
今週の一句
"他人の知恵 借りて活かして 拡がりを 世に示すこと 革命となるや"
オーストリア出身の英国の哲学者カール・ポパーが論文『推測と反駁 科学的知識の発展』(1963年)で「科学は神話とともに、そして神話に対する批判とともに始まる」と述べているように、新しいものが生まれる前には、神話のように圧倒的に絶対的なものが存在しています。それでも目の前の神話を覆すように反証することで、次の時代に向けての胎動が始まるのです。そして科学とは『何度失敗しても挫けず、繰り返しの連続に耐えること』なのです。科学は知識の体系化のことであり、その意味でも無から生まれるというよりは、事実の積み重ねの中から真実を表現することを見出すということに近いと思います。例えば18世紀の第一次産業革命がなぜ英国で起こり、どのように歴史を変えたのでしょうか。
1688年から1689年にかけて起こった名誉革命で絶対王政が崩れた英国では、もはや王に支配された貴族中心の社会ではなくなりました。そしてオランダのように多くの移民と自由な発想で世界を制する姿を目の当たりにすることで国民が大きく変化していったのです。それからは『他人から積極的に拝借する意思』が明確となり、他の場所からのアイディアについて底なしの好奇心を示すことで偉大なものを作っていくことを進めました。また『前世代の認めた叡智から平気で逸脱したこと』により新たな取り組みが次から次へと生まれたのです。その後は「大学の役割は人々を快適にすることではなく、人々を考えるように仕向けることだ」と言われるように、学問の世界で考えた人の作品は他の国に行くのではなく、英国で実行されていったのです。このように外部に対してオープンにすることと、過去に縛られないことが新たなものを生むのです。わが国でも今生まれつつあるものは、他からの知恵を活かしつつ、過去にとらわれないものが多々あります。このようにして現代の産業革命は起こることがあるのだと考えます。
参考: ヨハン・ノルベリ著『OPEN:「開く」ことができる人・組織・国家だけが生き残る』(2022年)
第一次産業革命について
出所:各種資料を基にあおぞら投信が作成。