
No.529 カントリーリスクの複雑さ ― 現在のリスクとは? ② ―
今週の一句
"菊の節句 世界に広げる 平和へと 国を地域を 境を超えて"
2024年9月現在、地球上ではどれだけの紛争が起こっているのでしょうか。少なくとも第二次世界大戦以降、最も紛争が多い状況にあると言えるのではないでしょうか。直接的に自分の身に火の粉が降りかからないからといって、この状況を看過することは出来ないと思います。これだけ多くの紛争が起こっているということは、何とか国際秩序を保っていた国と国との関係に亀裂が入っているということであり、また国内でも対立する関係が表面化しているということなのです。今後、日本にとって無関係なものではないと言ってよいでしょう。
まず2022年初頭に始まったロシアのウクライナ侵攻は2年を超えて依然として激しく、ウクライナ国民の安全保障とロシアへの国際制裁を考えると、終わりを見出すことが難しく、和平交渉が中断されている状況です。また、2023年10月にパレスチナ自治区のガザ地区を実効支配するイスラム原理主義組織ハマスによるイスラエル襲撃から始まった紛争は、史上最も破壊的とも言われるイスラエルの軍事行動により、イランでハマス指導者が暗殺されており、ベイルートではイスラム教シーア派組織ヒズボラの最高幹部が暗殺されたことを受けて、紛争がさらに拡大する可能性があると見られています。このような中、8月に格付け会社フィッチ・レーティングスは「我々の見解では、ガザでの紛争は2025年に入っても続く可能性があり、他の戦線にも拡大するリスクがある」として、2月のムーディーズ、4月のS&Pグローバルに続いてイスラエルの長期の格付けを引き下げました。
ミャンマーでは2021年初に、前年の選挙結果を退けてミャンマー国軍がクーデターにより暫定軍事政権を樹立しています。その後は民主派勢力の反政府運動を弾圧し、大量の避難民と人道緊急事態をもたらしていますが、国際的議題としては注目度が低く、国際機関の対応も遅れています。
そして、今年2024年はエルニーニョ現象によって記録的な高温や厳しい干ばつ、破壊的な洪水が起こっています。このような自然災害が起こった場合は、政府の適切な対応が強く求められ、その対応によっては国民の反政府感情が生まれやすい状況となります。
このような時代では、個別国家のカントリーリスクはもちろん存在しますが、より地政学リスクの高まりも重なってきております。いまや世界は、これまでより複雑なリスクマネジメントが必要な時代なのだと考えるのです。
現在における世界の紛争状況
出所:各種資料を基にあおぞら投信が作成。