
No.453 英国の低迷 ―30年単位の変化 ③ ―
今週の一句
"英国の 繁栄残る 城跡に 若者たちの 思い残るや"
1992年の英ポンド危機から30年を経た昨年2022年、トラス前首相の大型減税案から市場は大混乱しました。そして国際通貨基金(IMF)は今年1月、2023年には英国が主要国で唯一マイナス成長に陥るとの予測を示しました。実際にマイナス成長になれば、新型コロナウイルス禍で落ち込んだ2020年以来となります。不振が長期化すれば、1960-70年代の「英国病」再発を懸念する声もあります。IMFは英国を下方修正した理由として、エネルギー価格高騰による個人消費の低迷や増税などの要因を挙げています。
現在、ハント英財務相は「(物価高など)ほとんど全ての先進国経済を直撃している圧力と我々も無縁でない」と述べ、景気低迷は主要国共通との認識を強調しています。2022年の英経済は、多くの予測を上回り高い成長を実現したものの、その反動も一因であり、今後インフレを半減させられれば、中期的には成長を回復できると述べています。一方で欧州連合(EU)離脱の影響については、1970年代の「英国病」の再発のリスクがあるという見方があります。1993年マーストリヒト条約発効によるEUスタート時に英国は通貨統合に参加せず、EUとの距離感を保ちつつも関係を構築してきました。この間の30年でメリットを大いに享受してきたものが、EU離脱によりさまざまな障壁が生まれ、貿易や投資が低迷し、経済活動を押し下げたというものです。今後、国内政策では経済活性化策の手始めとして、設備投資減税の延長のほか、職場復帰を促すための子育て支援や職業訓練の強化、地方分権の推進を提案などスナク首相率いる政府予算案への期待はあります。「英国病」という先進国病への取組みは、我が国にとっても大いに注目すべきものだと考えるのです。
柳谷俊郎
出所:(上グラフ)国連 National Accounts DB、 IMF World Economic Outlook Database October 2022のデータを基に、 (下グラフ)イングランド銀行のデータを基にあおぞら投信が作成。