
No.538 なぜアメリカという国が生まれたのか? ― 米国大統領選挙 ① ―
今週の一句
"誰のため まつりごととは あるのかと 国とは何か 1から始めよ"
「すべての人は平等に創られ、一定の不可侵の権利を有する」とアメリカ独立宣言にある通り、ジョン・ロック(イギリスの哲学者)の『社会契約説』、すなわち人間は生まれながらにして生命、自由、財産の権利(自然権)を持ち、政府はこれらの権利を守るために存在し、人民の同意を基に成立するという民主主義の考え方こそが、アメリカ建国の精神です。また、君主制ではなく共和制という人民の意思によって指導者が選ばれる制度を置いて、政治家は人民に対して責任を負うということがベースとなったのです。果たして、今回の大統領選挙はそのような建国の精神が反映されているのでしょうか。
1787年、アメリカは、独立後に制定した合衆国憲法において、三権分立の原則である、行政(大統領)、立法(連邦議会)、司法(連邦最高裁判所)の三つの権力を分けて、互いに抑制と均衡を保つシステムを設けました。それにより、政府や大統領による恣意的な統治を防ぐため、法の支配が定められました。アメリカ合衆国憲法は、国家の最高法規であり、政府の行動を制限し、個人の自由と権利を保障しているのです。歴史の中では、建国当初には一部の白人男性のみが選挙権を持っていましたが、時代を経てすべての市民が政治に参加する権利が保障されるようになりました。
今、アメリカ自身が問われているのは、自由と自治を獲得するための独立運動の歴史から、今後のアメリカの自由と自治とはどのようなものなのか、ということなのです。すなわち、そもそも移民がつくったアメリカという国は、歴史を経て自分たちより後からの移民にどのような自由と権利があると考えているのでしょうか。一般的に、人は自分の権利を主張することには何のためらいもないことがありますが、同じように他人の権利も保障することに思いが至るのかがポイントなのです。
この国の発展の姿は他の国にも大きな影響を与えてきました。だからこそ国際社会の中で現在の地位があるのでしょう。今後の国際社会のあり方を考える時、アメリカの今後の姿は決して他人事ではないと考えるのです。
アメリカ独立宣言の背景
アメリカの三権分立の仕組み
出所:各種資料を基にあおぞら投信が作成。