マーケットの見方

No.476 中国での金利引き下げと不動産開発問題 ―銀行等の状況はいかに? ②―

今週の一句

"大陸の 都市開発が 進む時 バブルの姿 思い起こして"

中国人民銀行(中央銀行)は8月15日、市中銀行向け中期貸出制度(MLF)の1年物金利を従来の年2.65%から年2.50%に引き下げました。金利引き下げは6月以来2カ月ぶりとなりますが、引き続き緩和的な金融政策で不動産市況の悪化の影響が大きい中国の実体経済を支える政策を取っています。中国の経済については、今年1〜7月のマンション建設など不動産開発投資は前年同期比8.5%減少しています。販売不振の長期化で住宅の在庫水準は高止まりしており、新たな開発投資も低迷している状態です。

そのような中、経営再建中の大手不動産開発会社・中国恒大グループ(エバーグランデ、広東省深セン市)が米国で破産法の適用を申請し、加えて同業の碧桂園(カントリー・ガーデン、広東省仏山市)が発行したドル建て社債2本の保有者に対して、8月7日が期限であった利払い(総額2,250万ドル)を履行できないという事象が発生しました。その後30日間の猶予期間内に支払いができなければ、デフォルト(債務不履行)となります。さらに同社は13日の香港証券取引所への届け出で、同社と関連会社が発行した人民元建て社債11本について14日から取引停止とすることを発表したことから、デフォルト懸念が一層高まることになっています。2023年1~6月期の最終利益が450億~550億元(約9,000億~約1兆1,000億円)の赤字に転じる見通しを発表したことも含め、同社の経営不安が一気に高まっている状況です。このような急激な収益悪化の背景にあるのは、開発物件の販売減少です。2023年1~7月の同社の販売額は1,408億元(約2兆8,160億円)と、前年同期比-35%、前々年同期比-61%と大きく減少しています。また、同社は恒大グループの4倍にも上る住宅開発プロジェクトを抱えていることから、デフォルトに陥れば恒大グループよりも影響は深刻との見方もあります。今後、不動産開発業者の資金難から住宅建設の停止へと波及し、個人の住宅購入の手控えから住宅価格の下落へと繋がった場合、既に住宅を所有する個人にとっては逆資産効果を生むため個人消費の低迷にも繋がっていく可能性があります。1990年代の日本と同様のことが起こるのか注視する必要があると考えます。

 

中国全国不動産開発投資額(前年同期比) 

 

出所:中国国家統計局HPよりあおぞら投信が作成。

 

 

中国住宅不動産価格指数の推移(2005年12月-2022年12月)

出所:国際決済銀行「Residential property prices」よりあおぞら投信が作成

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