
No.460 スウェーデンでのキャッシュレス社会 ―世界の出来事 ④―
今週の一句
"タンス預金 お金に色は ないけれど デジタル通貨は 何処にあるやら"
世界では、現在の貨幣システムから、中央銀行デジタル通貨(CBDC:Central Bank Digital Currency)への開発が進んでいます。2019年に世界で最も早くに導入した国はバハマで、次いでカンボジアでスタートしました。その他では、中国でCBDCを専用のウォレットで提供する実験が数都市で行われており、欧州中央銀行(ECB)、米連邦準備制度理事会(FRB)、日本銀行などでも研究が続けられています。導入にあたっては、民間との協力関係の構築や、国民にとっての利用価値の創造、そして金融政策の有効性など複雑な関係の解決が必要です。
そのような中、スウェーデンおけるCBDCであるe-kronaプロジェクトはキャッシュレス化の進展を土台にしている点で注目されます。デビットカードに加えて、2012年にSwishという個人間送金サービスを民間銀行6行とともに開始しました。現在は企業(店舗)への支払いサービスやEC(Electric Commerce:電子商取引)の支払いが可能となっており、国民の70%がユーザーとなっています。ただし、若年層で銀行口座を持っていない人々や高齢者で参加出来ない人々の存在があるため、インクルーシヴ(包括的)な政策を目指す上では考えなくてはいけない課題もあります。その他、世界的にこれまで高額紙幣が不公正取引、脱税などに利用されるケースが多かったこともCBDCを推進する理由となっています。様々なメリットとデメリットがあるCBDCですが、今後の大きな展開としては、民間銀行と金融政策でコントロールをする中央銀行と個人の関係の変化が想定されます。極端に進めばCBDCは個人情報までを管理することに繋がるという懸念もあります。いずれにせよ貨幣という経済の血流の考え方が変わろうとしている中で様々な試みが動いており、我々個人が、あるいは企業がどのような経済活動を行い、その時にマネーの動きはどのようなものになるのか。これからの社会の変化に呼応していくものとして注目していきたいと考えます。
各国のCBDCの動向(2023年4月末時点)
出所:各国中央銀行や各種報道の情報を基にあおぞら投信が作成。