
No.577 資産運用会社の存在意義とは? ― 資産運用立国へ ②―
今週の一句
"預かると その重さに 耐えつつも 次の時代に 一歩踏み出し"
我が国が『資産運用立国』と呼ばれるための条件とは何なのでしょうか。まずは投資家が資産運用を行うインセンティブを持つことが大切です。「何のために投資をするのか」という問いかけに対して「豊かな人生を送るためにお金にも働いてもらうことが重要なのである」といった考えを個人がしっかりと身につけて来るようになると、まずは投資の大切さを理解した個人、すなわち金融リテラシーがある国民が増えるということになります。
それでは、その国民の大切な資産を守るための資産運用会社とは、何を目指して存在しているのでしょうか。日本における資産運用会社の歴史は、金融制度に守られていた戦後から1980年代までの、公的年金・企業年金中心の時代から始まります。この時代は信託銀行、生命保険会社が運用機関として大きな役割を果たしていました。1980年代になるとバブル経済の中で投資信託市場が拡大し、投信会社の拡大が見られたのです。しかし、バブル崩壊とともに残念ながら投資信託の信頼は低下、一方、年金の世界は確定給付年金(DB)の資産運用自由化が進み、年金資金受託を目指す資産運用会社の役割が拡大しました。その後は金融ビッグバン(1996年以降)により、規制緩和と外資の参入が進み、投信投資顧問会社が増加、個人の資産運用が本格化していきます。また、1998年に投資信託の銀行窓販が開始、2001年には確定拠出年金(DC)制度の導入も開始されました。ここから2008年の世界的金融危機を経て、2014年にNISA制度が始まるなど、『貯蓄から投資』の流れが本格化しました。
そして今、給与を得た若者は『最初から投資(積立投資)』が拡大しており、これまで“投資”の経験が少なかった50代から60代の人も、人生の後半に向けて資産運用の大切さを理解しつつあるのです。人生を豊かなものにするための資産運用の価値を、これからさらに国民に知ってもらい、経験してもらうために、資産運用業の役割は重いものになります。すなわち資産運用業とは、お客さまの資産を守り育てること以外に存在の意味はないのです。いよいよその存在価値が問われる時代になったと考えるのです。
資産運用会社における公募投資信託と私募投資信託の残高の推移
(1999年~2024年)
出所:一般社団法人投資信託協会 統計データ「公募投資信託・私募投資信託‐資産増減状況」を基にあおぞら投信が作成。