
No.507 マイナス金利からの脱出 ―異次元緩和のその後 ②―
今週の一句
"減点主義 成長を止める 安心感 大胆に進む 新たな息吹"
日本銀行(日銀)は先月(2024年3月)18・19日の金融政策決定会合で、2%の「物価安定の目標」が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至ったとの判断を示し、マイナス金利を解除しました。2016年1月、2%の物価目標の達成が見通せない中、金融緩和策をより強化するために日銀が史上初のマイナス金利導入を決定してから約8年後の決定となります。8年前のマイナス金利導入時に、実際にマイナス金利を適用されたのは、金融機関が日銀に預ける一部の当座預金でしたが、円金利がマイナスゾーンに入ったことによって、世の中の人々の心理的なマイナス面は大きなものがあったのではないでしょうか。
世界の中央銀行でのマイナス金利導入は、2012年のデンマークから始まり、2014年のユーロ圏、スイス、2015年のスウェーデンと続いて、その後に日本での導入となりました。欧州各国は2022年にマイナス金利を解除しており、今回の日銀による解除が最後となったのです。マイナス金利の直接の効果はその対象である金融機関の貸出態度に反映されるかにかかっているわけですが、果たして効果はあったのでしょうか。この点は今後の分析によって明らかにされるものと思われます。マイナス金利という異次元緩和の影響がもっとも大きかったのは、預金者であり、消費者だったのではないかと思うのです。史上最低の預金金利の向こうにマイナス金利が透けて見えることで、デフレーションの長期化を想定せざるを得なくなり、より現金・預金への集中化が強まったという姿が、その心理を表してきたのだと思います。「大胆な金融政策」、「機動的な財政政策」、「民間投資を喚起する成長戦略」というアベノミクス“3本の矢”のうち、21世紀の日本の活性化にとってのカギは「民間投資を喚起する成長戦略」以外にないと唱えられてきました。しかし、それを支えると称していた「大胆な金融政策」は、もしかすると自らの成長への変化を先送りさせてしまったのではないかと思うのです。そもそも大胆になるべくは金融政策ではなく、自分たちの成長戦略こそ大胆に進めることだと自覚することにあるのです。そしてその動きが今始まっており、それを継続することが肝要なのだと考えるのです。
日本における個人金融資産の推移
出所:日本銀行「資金循環統計」よりあおぞら投信が作成。