マーケットの見方

No.595 金融は包摂的な(Inclusive)イノベーションへ ―企業経営の目指すもの ③―

今週の一句

"目の前の 利を求めれば 独りよがり 共にと思えば 世と繋がりて"

企業経営の中でも金融業については、その経営スタンスによって大きく違いが現れます。金融分野における収奪的な(Extractive)イノベーションでは、日本の金融業界で散見されたような、手数料ビジネスの高度化だけが突き進むといったことが起こります。複雑な金融商品の販売や、販売側の収益最適化が進み、その成果が家計や地域経済の成長に十分につながらない状態となってしまうのです。そればかりではなく、それ以前の自らを『信用創造』と名乗り、一部の金融機関・大口顧客・既存プレーヤーに偏在した行動は、中小企業や家計、地域経済の成長に十分つながらない状態が続いた歴史があります。

これからの金融を包摂的な(Inclusive)イノベーションと考えることができるかが、金融業の存在意義を生むのではないかと考えます。それは、まず家計の資産形成を中心に据えた金融であり、長期・分散・低コストの資産形成支援を目指し、金融業は『販売者』から『伴走者』となるビジネスモデルへの転換が期待されています。また、金融の高度化については、AIが担える財務データに加えて、人が担うべき非財務データ(人材・技術・GX)を活用した与信を行い、ただ金利を得るのではなく「成長支援」で収益を得るスタイルを目指すことが重要です。そして、地域金融×デジタルは地域課題(観光、医療、農業、脱炭素)への資金循環を生み出す力となり、地域金融機関は単なる『貸し手』から『価値共創のハブ』へと役割がInclusiveなものになっていくのです。

1990年代以来、日本の金融業は黒船による荒波に押されてもがいてきました。それは日本企業全体の経営にも同じことが言えます。なぜ日本企業が、厳しい環境下で成長できてきたかを今一度考えれば、人の力をいかに活かしていくかであることに気付くと思います。そしてこれからは、それぞれの企業の力に留めるのではなく、企業間、地域などを大きく包み込むことで次の時代に存在意義を持っていくのだと考えるのです。今年、2025年の「乙巳(きのとみ)」は「再生や変化を繰り返しながら柔軟に発展していく」ことの一歩を踏み出す年となったのです。

本年も大変お世話になりました。皆さま、どうぞ良いお年をお迎えください。

家計の金融資産の変化

*カッコ内の数字は内訳。
出所:日本銀行「資金循環統計」を基にあおぞら投信が作成。

一覧に戻る

本コラムは、情報の提供を目的としており、何らかの行動を勧誘するものではありません。また、営利・商業目的の利用は一切行っておらず、広告収入や販売目的のコンテンツではありません。
本コラムは信頼できると思われる情報に基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。記載の情報は作成日現在のものです。ここに示された意見などは、本コラム作成日現在の当社の見解であり、事前の予告なしに変更される事もあります。投資信託の取得に当たっては、投資信託説明書(交付目論見書)等の内容を必ずご確認の上、ご自身でご判断ください。