
No.552 日本における企業の価値創造とは? ― 日本の株式市場 ① ―
今週の一句
"常にある 自らの価値 上げる道 周りの人の 目を意識して"
2023年3月末に、東京証券取引所から上場企業に対して、PBR(株価純資産倍率)1倍割れを始めとするコーポレート・ガバナンス(企業統治)への対応を要請する資料が公表されました。それまでも企業の成長戦略への取組がなかったわけではありませんが、この要請を機に一段と加速したことは間違いありません。また、まさに企業統治の考え方の見直しが行われたことで、改革が進んだところも見て取れるのです。結果として、今年2025年2月10日現在の日経平均株価指数採用銘柄のPBRは1.40倍となり、2023年3月末の同1.18倍から高まっています。
企業の成長戦略のためには、まずもって企業の本質的価値を明確にすることと、その価値について競争戦略をもってマーケティングすることが重要です。株式会社であれば、4つのステークホルダーに対して的確なリターンを提供することが求められています。まず①株主に対しての収益還元であり、②顧客に対しての満足度であり、③従業員に対しての給与と働き甲斐であり、さらに④社会に対しての貢献があります。この4つのバランスをいかに保つかが動的な経営戦略となります。収益を求めることを忘れることはないでしょうが、特に収益も短期的な収益だけに偏ってしまえば、将来の収益機会獲得のための投資コストをかけることを忘れがちでもあります。そのような状態では、お客さまに対してサービスの質を向上させるために必要な手を打つチャンスも逃してしまうでしょう。また、いかに従業員のモチベーションを高めるかは、社会における自分たちの貢献を感じることとも通じるのだと思います。
本質的価値については、様々な環境変化に応じているうちに、ずれを生じることも間々あります。だからこそ、時として見直すことが必要となるのです。10年、20年、30年と長期に亘って通じる価値創造とは何なのか、ということを突き詰める過程にこそ、その企業の本質を見出す機会が生まれるのだと考えます。
日経平均採用銘柄の株価純資産倍率(加重平均PBR)推移
(2021年3月31日~2025年2月10日)
*赤線は東京証券取引所から改善要請があった期日を指す。
出所:日本経済新聞社のデータを基にあおぞら投信が作成。